英国・保守党の党首選を独走し、次期首相を目指すボリス・ジョンソン前外相が、最大の課題である欧州連合（ＥＵ）離脱問題で、三枚舌を使っている。メディアを避け続け、自分の公約の精査を拒むジョンソン氏は、離脱派を裏切った上で、どう権力を保ち続けるかを画策している。

得意技は「豹変」

　劇作家ウィリアム・シェイクスピアの母国に、政治の退屈はない。二〇一九年の保守党党首選も、肝心の政策論議は空っぽながら、裏切り、不意打ち、雲隠れと劇的要素にあふれていた。
　党首選とその後に控える「ジョンソン次期政権」について、最も鋭い疑問を発したのは、ＢＢＣのラジオキャスター、エマ・バーネット氏だった。彼女は六月中旬のニュースショーで、ジョンソン陣営のジョニー・マーサー下院議員にずばり切り込んだ。
「ボリス・ジョンソンには何人の子供がいるのですか？」
　同下院議員には答えられない。バーネット氏はたたみかけた。
「五人なの？　六人なの？」
「自分の子供は何人か、という基本的なことで、なぜ・・・