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WORLD

インドに忍び寄る「イスラム国」

過激思想が蔓延するテロの「新天地」

2019年7月号

「今日、誰かが勝ったというのなら、それは国民と民主主義だ!」
 インドの総選挙開票が行われた五月二十三日、予想に反して地滑り的圧勝を確実にしたモディ首相は笑顔で勝利宣言を行った。
 同日、カシミール地方ではインド当局による対テロ作戦が実行されていた。治安部隊は「アンサル・ガズワトゥル・ヒンド」司令官ザキール・ムサ容疑者を殺害することに成功し、モディ首相はもうひとつの勝利も収めたのだ。ムサ容疑者はカシミール地方の有名テロリスト、ブーラン・ワニ(二〇一六年に治安部隊によって殺害)の後継者で、国際テロ組織「アルカーイダ」のカシミール地方司令官に任命されていた。
 しかしムサ殺害後のカシミール住民の反応をみればインドが抱える複雑な事情が浮かびあがる。ムサの葬儀には地元民一万人以上が参列し、人々は「反政府ゲリラの英雄」としてムサの死を悼んだ。「ムサ! ムサ!」と住民は叫びながら抗議し、治安部隊に石を投げつけるなど治安が悪化した。そしてこの地で新たに不穏な動きが広がっているのだ。
「シリアとイラクにあったイスラム国(IS)のカリフ制支配エリアは存在しなくなっ・・・