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連載

《世界のキーパーソン》ジョン・エルカーンフィアット・ クライスラー会長

「仏ルノー統合」を仕掛けた御曹司

2019年6月号


 日産自動車とフランス「ルノー」のドラマに、またも新たな展開だ。
 五月二十七日、「フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)」がルノーに、「事業統合」を正式に提案した。提案書は、「ルノー・日産・三菱アライアンスの既存のシナジー(相乗効果)に加え、年間推定五十億ユーロ超の新たな効果がある」と試算する。フィアットは四社連合で世界制覇を目指すというのだ。
 仕掛け人は、フィアット創業家「アニェッリ家」の若き総帥ジョン・エルカーン。四月に四十三歳になったばかりだ。祖父のジャンニに「次はお前だ」と指名され、一九九七年にフィアットの役員会入りした時には、まだ二十一歳の学生だった。
 日本では江戸時代から「売り家と唐様で書く三代目」と言われる。ジョンは第五世代。しかも変遷が激しい自動車業界である。二〇〇三年にジャンニが、〇四年にその弟ウンベルトが死去すると、創業家にはライバル社が襲い掛かり、銀行が債務返済を迫った。ジョンは「我が家にこんなにもたくさんの敵がいたとは」と、後に語る。
 ジョンがこの「とても暗い時代」を抜け出したのは、セルジ・・・