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連載

美の艶話 第42話

スイカズラの蜜の味
齊藤 貴子

2019年6月号

未練がましいのは嫌いじゃない。
 というより、人でも物でも、まるでハサミでプツンと糸でも切るみたいに、あっさり断ち切れるほうがどうかしている。恋愛は条件やスキルではなく、気持ちひとつが判断材料。味覚と同じく数字化も可視化もできない恋慕の情は、思いきり後を引くくらいでなきゃ、誰にも伝わらないし届かない。それこそいつまでも、イジイジしているくらいじゃないと……。
 大体いい年して、別れる別れないと膝詰め談判したって始まらないし、つまらない。恋に恋する頃を過ぎてからの、大人になってからの恋愛は、まごうことなき縁なのである。どちらかがいずれあの世に先立つのだから、焦って縁切りするまでもない。
 互いに背負うものも守るものもありながら恋に落ちたなら、ただ忘れずにいることが、何よりの愛の証。諦めきれるなら、所詮それまでの恋、ということだ。
 このことを、目にも鮮やかな画面いっぱいの緑で訴えかけてくるのが、十九世紀イギリスの画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ晩年の傑作《白昼夢》である。
 そもそも、ロセッティという画家に・・・