《地方金融の研究》武蔵野銀行
千葉銀行による「併呑」の危機
2019年6月号
「ADR(裁判外紛争解決)なので融資はいずれ戻ってくる」。武蔵野銀行頭取の加藤喜久雄(六月二十六日付で会長に就任)はこう期待を込める。
北米事業の不振による財務悪化などで今年一月、弁護士や公認会計士などから成る事業再生実務家協会に事業再生ADRの手続きを申請した曙ブレーキ工業。その曙ブレーキに、主力行のみずほ銀行や準主力の三井住友信託銀行など三行に次ぐ規模の七十億円を貸し込んでいた武蔵野銀は、二〇一九年三月期決算で融資残高の全額引き当て処理に踏み切った。このため期中の与信費用は、一般貸倒引当金の繰り入れなどを合わせて百十五億円強(単体ベース)と一挙に前期の六倍超にまで急膨張。期初に前期比二%増の百三億円としていた最終利益は四十七億円と五割を超える大幅な減益に陥った。
とはいえ禍福は糾える縄の如し。ADRの枠組みの下で曙ブレーキの再建が進められることになれば、こうして引き当て処理した貸出金が将来的には「戻し入れ益」という形で利益に跳ね返ってくるというわけだ。だが、果たして事はそう上手く運ぶのか――。
曙ブレーキ再建への疑問符・・・