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社会・文化

大恥の日本「WTO逆転敗訴」

国際潮流を解さぬ政権の「外交音痴」

2019年5月号

「地球儀を俯瞰する」をうたい文句に、積極的な首脳外交を繰り広げている安倍晋三政権だが、派手な演出ほどの成果を上げていない。それどころか経済分野では自民党内からも「外交の敗北だ。一体何をやっているのだ」(小野寺五典前防衛相)と怒声が上がる失態を招いた。韓国による日本産水産物の禁輸を世界貿易機関(WTO)が容認したことだ。

 四月十七日朝、自民党本部で開かれた外交・水産合同会議は大荒れだった。WTO敗訴の報告会を兼ねたこの会合は、浜田靖一・水産総合調査会長が「結果を出せずに言い訳を聞いてもしようがない」と怒り出す事態となった。ひな壇中央の石破茂氏や中谷元氏ら重鎮も、目を閉じて腕組みし不快感を露わにした。
 

「予防原則」が争点での完敗
 

 WTOには、紛争処理小委員会(パネル)と上級委員会(アピール)の二段階の紛争解決手続きが整備されている。裁判所に例えると、それぞれ一審、二審という二審制で、上級委が最終的な判断を下す。専門用語満載の上級委の報告書(・・・