米中の狭間の「日本の針路」
戦争なき「令和」をどう実現するか
2019年5月号特別リポート
やはり言霊の国だったのだろうか。元号が平成から令和に変わっただけで、あたかもより平和な時代に移行するかのような雰囲気が日本全体に漂い始めたようだ。しかし、国際社会の現実は日本の現状に対応して動きを示してくれるはずがない。日本の地政学上の位置には、世界一のシーパワーである米国と、地域のランドパワーから世界のシーパワーを兼ねた一大勢力にのし上がろうとしている中国の狭間に存在するという動かし難い事実がある。
戦後から日本が選んできた道は、日米同盟を基軸にしてアジア大陸の脅威にいかに対応するかであった。それは冷戦下ではソ連の脅威であったし、二十一世紀に入ってすぐに脅威の対象が中国に交替したに過ぎない。ただし、そこで変化した要素が二つある。一つは冷戦の時代にはイデオロギー面を中心として、政治、経済、軍事などの分野において両陣営が、画然と分かれていたのに対して、今は各国の利害関係が錯綜していることだ。グローバリゼーションの進行によって、人、物、カネ、情報、技術、それにテロまでが地球の隅々に拡散してしまった。経済、軍事といった狭い範囲の対立ではなくて、インタ・・・