三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

インドで嫌われる「孫正義」

「起業家泣かせ」金満ファンドの驕慢

2019年5月号

「絶好調です。ビジョンは始まったばかり、AI革命は始まったばかり」
「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF事業)およびデルタ・ファンド事業が大きく伸びた」
 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は二月、決算説明会で誇らしげに語った。一千億ドルという巨額の運用資産を持つSVFは創設以来、世界のハイテクベンチャー界に話題を振りまき続けている。だが、孫氏がどのように投資をしているかをみれば、SVFとソフトバンクの本質的な品格の低さがわかるというものだ。若い起業家を愚弄するビジョンなき有害ファンドの運営をみていこう。
 三月某日、インドの首都デリー市内のある高級ホテル。SVFの責任者であるラジーブ・ミスラ氏は、SVFに四百五十億ドル出資するサウジアラビア公共投資基金(PIF)のヤシル・アルルマヤン代表(ソフトバンク取締役を兼務)とともに、Paytm(オンライン決済)、グローファーズ(食品配達)、オヨ(宿泊仲介)、デリーベリー(3PL物流)の各分野のSVF出資先ベンチャー経営者らと会合を開いて挨拶を交わしていた。
 だが、そこにいるはずの人物がいなか・・・