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習近平が憂う「天安門三十周年」の亡霊

米国は「和平演変」を諦めない

2019年5月号

 中国共産党にとって「深く突き刺さったままのナイフ」と言われる一九八九年の天安門事件。毎年、厳戒態勢の六月四日(六・四)を、事件から三十周年にあたる今年は米中経済戦争のただなかで迎える。中国国内では民主化を求める市民の声は着実に増え、その象徴として天安門事件の再評価を求める民意は時を経ても薄れることがない。毛沢東に並び立つ「皇帝」を目指す習近平主席にとって、天安門事件こそ乗り越えるべき最大の課題となっている。だが、対峙するトランプ政権は今、天安門事件を中国国民を指嗾し体制転換に向かわせる材料にしようと動いている。

ナショナリズムを乱す存在

 昨年七月に名指しこそ避けたものの習主席への権力集中、神格化を痛烈に批判する論文を発表した許章潤・清華大学法学院教授が三月、停職処分を受け、教育・研究活動を禁止されている。「批判論文発表から八カ月もよく持ちこたえた」という声が多いが、やはり天安門事件の記念日となっている六月四日までその地位を保つことはできなかった。
 主席批判は「党内民主」の建前もあって一定程度ま・・・