降り注ぐ陽光と紺碧の穏やかな海、そしてそれに調和して点在する島々の白壁の建物―。文字通り絵のような光景が広がるギリシャのエーゲ海は、世界中の観光客を魅了する特筆すべき別天地だ。
だがその裏で、熾烈なパワーポリティックスが新たに東地中海一帯で展開している実態は、観光地としての「名声」ほどには知られていない。
　すでに本誌昨年五月号の「トルコが狙う『東地中海ガス資源』強奪」で、イスラエルとキプロスの沖で巨大ガス資源が発見され、それを狙うトルコがギリシャやキプロスとの間で国境紛争まで起こして介入している実態を伝えている。そしていまやこの海域一帯には、「資源争い」を超えた大国間の戦略的抗争が出現しつつある。そこでの新味はロシアとイラン、トルコの「三国枢軸」に対抗する、ＧＲＩＳＣＹと呼ばれる「ギリシャとイスラエル、キプロスの連合」という図式だけではない。新たに、「米・ギリシャ同盟」がロシアの覇権に立ちふさがる最前線に登場したのだ。

急進左派首相の「宗旨替え」

　ギリシャのアレクシス・ツィプラス首相・・・