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経済

三井住友銀で「不当手数料」強要横行

「マチ金」並みの手口で貪る暴利

2019年3月号公開

「目が点になった」
 四国地方に本社を置くメガソーラー関連会社の社長はこう言って呆れ返る。中国地方にある太陽光発電所に設定された、地上権と売電収入など発電事業に関する権利を信託財産とした信託受益権を取得したいとして今年一月、取引金融機関の一つである三井住友銀行(SMBC)に対し総額三億五千万円の融資を打診した時のことだ。
 しばらくしてSMBCの担当者が作成し持参してきた「提案書」に融資の前提条件として見慣れぬ言葉と金額が記されていたのである。
「アレンジメントフィー:実行日に一千五百万円(消費税別)」―無論、月々返済する元本にかかる金利とは別建てである。
 銀行から融資を受ける際に金利とは別に手数料を要求されることは少なくない。住宅ローンはその最たるもので、銀行事務手数料などとして五万円前後が徴求されている。またアパートローンなど、投資用不動産の取得資金や建築資金にかかる融資にも手数料がかかるのが一般的だ。
 さらに船舶の取得とその運用による運賃収入を返済原資としたシップファイナンスや、棚卸資産など動産を担保にした融資といった特殊な融資も手数料のかかることが多く、シップファイナンスとよく似たスキームの太陽光発電設備向け融資も手数料徴収の対象としている銀行がほとんどだ。
 とはいえ、その手数料は概ね融資実行額の一%前後。三億五千万円の借り入れに対して一千五百万円、率にして四・二八%もの手数料を要求するなんて、まさに「破廉恥極まりない所業」(地銀大手幹部)といわざるを得まい。

「優越的地位の『活用』と言って」

 それにアレンジメントフィーとは通常、複数の金融機関が参加するシンジケートローン(協調融資)における主幹事に対して支払われるものだ。主幹事はストラクチャーの提案から、シンジケート団の組成に際しての参加金融機関の募集や貸出条件の交渉・設定、さらにそれを契約書に落とし込む作業まで行う必要がある。大規模な案件だと関係者による調印式のアレンジまでやらされる。こうした一連の調整業務に対する対価だ。
 しかし冒頭の融資案件はSMBCの単独融資。融資の枠組みも単純で、単に銀行から金を借りて信託受益権を購入するに過ぎない。SMBCは一体、どんな複雑なストラクチャーを考案し、何をアレンジメントしたのか。
「融資の見返りにこんな訳の分からない手数料を要求するなんてそれこそ優越的地位の濫用ではないか」。憤慨した会社社長がこう詰め寄ると、SMBCの担当者からとんでもない返答が返ってきて「もう一度呆れ果てた」という。
「いえ、これは優越的地位の濫用ではありません。優越的地位の『活用』と言ってください」
 優越的地位の濫用が成立するには三つの要件をすべて満たさなければならないとされている。一つは「地位要件」で、一方の当事者が他方の当事者より確かに優越的な地位にあると認められることだ。銀行と企業との関係でいえば、SMBC以外に取引先もなく、他行から借りられそうもないといった状況を示しているといえよう。
 二つ目が「濫用要件」と呼ばれるもので、優越的地位を利用して不当に相手方に不利益を課すこと。そして最後が「公正競争阻害要件」で、正常な商慣習に照らして不当に要求や取引が行われていることだ。
 これを踏まえると、確かに今回のケースでは優越的地位の濫用に当たるかどうか微妙だ。濫用要件と公正競争阻害要件は間違いなく充足しているものの、このメガソーラー関連会社は他の金融機関とも取引関係を持ち、また借り入れも可能だったからだ。実際、SMBCの融資提案に激怒した社長は別の地方銀行に相談。最終的に「何ら余計な手数料を払うことなく、融資に応諾してもらった」らしい。
 だが、SMBCの法人貸出先は全国約八・四万社にものぼる。その中には中堅・中小企業を中心にSMBCが圧倒的メーンで、あるいはSMBC一行取引といった会社も決して少なくないハズだ。そうした企業に資金需要が発生した際、今回のような不当なアレンジメントフィーの要求を突き付けられたとしたら、その企業は果たしてそれを撥ねつけられるだろうか。恐らく困難に違いない。

「付き合いたくない銀行」のDNA

 銀行の収益の柱の一つである「役務取引等利益」はこのところジリ貧状態が続いている。日銀のマイナス金利政策導入など超金融緩和の長期化による運用難から日本生命保険や第一生命保険グループなど生保各社が窓販人気の高かった「一時払い終身保険」などの貯蓄性商品の供給を停止。「売るタマがなくなって思うように販売手数料が稼げなくなった」(三菱UFJ銀行関係者)ためだ。
 三大メガバンクにりそな銀行と三井住友信託銀行を加えた五大銀行グループの一八年三月期の役務取引等利益も計一兆七百八十六億円と前期比微減。局面は一九年三月期に入ってからも一向に打開できず、三菱UFJ銀の上期(一八年四~九月)における国内役務取引等利益は一千二百四億円と前年同期比二十三億円のマイナス。みずほ銀行も横ばいの一千八十九億円にとどまった。
 そんな中、三メガで唯一、実績を伸ばしたのがSMBC。前年同期の七百七十四億円から八百四十六億円、同九・三%増と七十億円超も利益を積み上げてみせたのだ。しかしそれが、アレンジメントフィーという取引先からの「不当な搾取」(みずほ銀関係者)によって成し遂げられたものだとしたら……。
 SMBCを巡っては本誌一月号で既報の通り、SMBC日興証券と結託した取引先に対する違法な勧誘疑惑も浮上している。融資を行っていることをちらつかせながら、取引先企業やその経営者らにSMBC日興証券への口座開設や他社の証券口座から同証券の口座へ保有株の移し替えを勧めていたというもので、同二月号の続報によれば昨年末までに全支店でおよそ二万件に及び、何やら組織ぐるみの様相を呈してきている。
 なかには新規融資の実行と証券口座開設をセットにした「抱き合わせ行為」まがいの営業も行われていたというから「タチが悪い」(金融当局筋)。とはいえ、SMBC日興証券への口座開設や保有株の移し替えによって顧客が直ちに不利益を被るわけではない。
 だが、顧客に訳の分からない手数料を要求してそれをむしり取るというやり口はまさに顧客の不利益に直結する行為。「マチ金」をも髣髴とさせるあこぎな商法だ。
 六年前―。経済誌「週刊ダイヤモンド」が「半沢直樹」人気に乗っかる形で、上場企業三百六十二社を対象に行ったアンケート調査で堂々「付き合いたくない銀行」のワーストワンに選ばれたSMBC。「銀行都合の営業活動」が忌み嫌われた理由らしいが、そのDNAは脈々と受け継がれているようだ。


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