「誰も知らない男」「聞いたことのない名前」が、キャッチフレーズだ。その人物が間もなく、人口約五億人の欧州連合（ＥＵ）トップになるとしたら、ただ事ではない。
　欧州委員会委員長のポストは歴代、加盟国間の密室審議で決まった。ＥＵ市民の生活を左右する委員長がこれではまずいとして、二〇一四年から、欧州議会選の最大会派の筆頭候補が、「有権者の信任」を背景に、委員長に就任することになった。ジャン＝クロード・
ユンケルは、同年議会選で最大会派の中道右派「欧州人民党グループ（ＥＰＰ）」の筆頭候補だった。
　そのユンケルが今年退任する。
　今回の欧州議会選は、五月下旬に加盟二十八カ国（英国も含めば）で行われる。ウェーバーはＥＰＰ筆頭候補で、ユンケル後継に最も近い位置につけている。ＥＵ関係者以外には全く無名のウェーバーが、今年秋以降は米中露の指導者とともに、国際ニュースで最も頻繁に耳にする名前になる。
「ドイツ人でも、限られた政界関係者を除けば、全く知られていない。ＥＵトップがドイツ人になると知れば、全国民が驚くはずだ」とベルリンのドイツ人記者は言う。{b・・・