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社会・文化

広島県警「八千万円盗難事件」の虚実

解明を阻む「不倫醜聞」と隠蔽体質

2019年4月号

 これが、広島県警の責任の取り方なのか。前代未聞の不祥事を引き起こしても、トップから現場の管理者まで誰一人責任を取らないのが県警の流儀なのだろうか。二〇一七年の五月八日に発覚した、広島中央署一階にある会計課の金庫から現金八千五百七十二万円が盗み出された事件のことだ。
 警察内部で起きた事件としては、戦後例のない異様さで、盗難額も桁外れながら、発覚から二年近くたっても犯人の送検には至っていない。おまけに、現在まで処分者はゼロ。世の常識は、広島県警には通用しないのか。
 盗まれた現金は、被害者が全国で約四百人にも及ぶ広域詐欺事件の証拠品だ。会計課の金庫には当初九千万円あったが、最後に現金が確認されたのは同年三月十五日午後二時頃。県警はそれから一カ月半もたってようやく盗難に気付くお粗末さで、未だに盗難日すら特定できていない。
 当時の名和振平県警本部長は、在職中に一度も事件の記者会見に応じないまま、発覚から一年も経たない一八年一月十六日に中部管区警察局長に「栄転」。その前日の「離任会見」が最初で最後の盗難事件の発言の場となり、「(未解決のままなのは)残念で心苦し・・・