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社会・文化

「幻想」のiPS再生医療

世界が冷視「科学公共事業」の惨状

2019年4月号

 病気や怪我で失われた機能を回復させる「夢の再生医療」とされたiPS細胞。二〇一二年十月、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長が、この比類ない研究成果でノーベル医学・生理学賞を受賞し、急速な普及へ国民の期待が一気に高まった。あれから六年余り。期待と患者の切望とは裏腹に、現場の医療で実現しそうなものは数えるほどで、大半は血税を吸い込む「錬金術研究」だ。英科学誌「ネイチャー」が苦言を呈す事態にまで発展した。他方、さんざん盛り上げた日本の大手メディアは、その内実を伝えない。iPS再生医療は、政官学とメディアが一体で築き上げた「科学公共事業」という異名の聖域に姿を変えたのだ。
 いかに、いまだ幻想に取り憑かれているか。厚生労働省の専門部会は二月十八日、岡野栄之・慶應義塾大学教授らが申請していた脊髄損傷の患者への臨床研究、そして三月五日には、西田幸二・大阪大学教授らが申請していた角膜上皮幹細胞疲弊症に対する臨床研究を相次いで了承した。早ければ六月には一人目に移植される。これにより、日本で五つのiPS細胞の臨床研究が進む。先行する三つは、理化学研究所の髙橋政代プロジェクトリーダーらによ・・・