《地方金融の研究》栃木銀行
経営衰弱で持ち上がる「再編」観測
2019年4月号
「やはりアノ時、どんなに無理してでも買っておくべきだった」。東武宇都宮駅の西側に本店を構える栃木銀行。そのOB幹部の一人はしきりとこう悔やむ。
アノ時―。二〇〇六年秋に火ぶたが切られた足利銀行争奪戦。巨額の不良債権を抱えて〇三年十一月に経営破綻し、一時国有化されていた足利銀の受け皿選定に向けたM&Aディールに、栃木銀は三井住友銀行と大和証券グループ本社の投資銀行合弁、大和証券SMBC(現在は合弁解消)とタッグを組んで挑んだ。
しかし第一次審査こそパスしたものの、勝ち残った七グループによる第二次審査であえなく敗退。最終となった〇八年三月の第三次審査の結果、野村證券系の投資ファンドが中核となった企業連合にまんまと“獲物”を掻っ攫われた。当時三千億~四千億円とも取り沙汰されていた買収価格に二の足を踏んだためといわれているが、前出のOB幹部は「厳しい状況だったにせよ、資金調達のメドは何とか立っていた。足らなかったのは『小が大を呑む』ことへの不安を断ち切るだけの(首脳陣の)勇気と決断力だけだった」と振り返る。
「余力が尽きたも同然」・・・