三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

NZテロを誘発した米「憎悪産業」

資金力と影響力「絶大」の極右団体

2019年4月号

 ニュージーランド・クライストチャーチで起きた、二つのモスク襲撃事件(死者五十人)の背後に、米国の白人至上主義者や大富豪がいることが浮上している。憎悪の思想を広める白人至上主義団体には、世界中で数百億円規模の活動資金が流れ込んでいる。「憎悪産業」という言葉が生まれるほど、極右活動家は潤い、言動はますます大胆になっている。
 大量殺害事件の種を最初にまいたのは、ルノー・カミュという、売れないフランス人小説家だった(ノーベル文学賞作家、アルベール・カミュとは無関係)。仏文壇との交流を絶ち、十四世紀の古城に住んで、難解な作品を書き続けていた。
 ところが、二〇一〇年ごろから唱えだした「大置換」説が思わぬ反響を呼んだ。有色人種の移民が大挙して襲来し、白人女性の出生率が低下することで、フランスの白人が絶滅の危機に瀕するという筋書きである。米国に概要が紹介されると、白人至上主義者の間で「大置換ブーム」が起こった。
 オーストラリア人のブレントン・タラント容疑者は、犯行声明文書にこの英語題名(The Great Replacement)を付けるほど、「白人絶滅危機」論に・・・