仏国策会社ルノーの「黙示録」
新会長はゴーン以上の「危険人物」
2019年3月号
カルロス・ゴーン前会長の逮捕で揺れる、フランス自動車大手「ルノー」に、馴染みの風景が戻ってきた。二月十四日、羽田空港に降り立ったジャン=ドミニク・スナール会長は、貴族の称号にふさわしい優雅さを漂わせた。日産自動車側との会合でも、そつなく謙虚な発言を繰り返した。
押しの強いゴーンの時代がなかったかのような、新会長。だが、実はこちらの方こそ国策会社ルノーの素顔であり、日産や日本政府にとって厄介な存在だ。
スナール新会長は二十六歳で、フランス石油会社(現トタル)に入社。その後約四十年にわたり、財務専門家として、多国籍企業「サンゴバン」、アルミニウム大手「ペシネー」、タイヤ大手「ミシュラン」の経営に携わった。カナダ企業と合併したペシネーを除き、すべてフランス最優良企業「CAC40」に入る会社で、ルノーがその四社目だ。経済エスタブリッシュメントの王道を歩き続けたのである。
これが「馴染みの風景」というのも、ルノーのトップは歴代、官僚か他の国策企業の経営を通じて、時のフランス政府と強い絆を維持し続けてきたからだ。戦後、一九九六年の民営化までは国営企業であり、政・・・
押しの強いゴーンの時代がなかったかのような、新会長。だが、実はこちらの方こそ国策会社ルノーの素顔であり、日産や日本政府にとって厄介な存在だ。
スナール新会長は二十六歳で、フランス石油会社(現トタル)に入社。その後約四十年にわたり、財務専門家として、多国籍企業「サンゴバン」、アルミニウム大手「ペシネー」、タイヤ大手「ミシュラン」の経営に携わった。カナダ企業と合併したペシネーを除き、すべてフランス最優良企業「CAC40」に入る会社で、ルノーがその四社目だ。経済エスタブリッシュメントの王道を歩き続けたのである。
これが「馴染みの風景」というのも、ルノーのトップは歴代、官僚か他の国策企業の経営を通じて、時のフランス政府と強い絆を維持し続けてきたからだ。戦後、一九九六年の民営化までは国営企業であり、政・・・