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連載

をんな千一夜 第24話

「黒姫」と呼ばれた皇太子妃
石井 妙子

2019年3月号

《九条節子(貞明皇后)》

 二十歳になった皇太子(後の大正天皇)のもとに明治三十三(一九〇〇)年、十五歳で嫁いだ九条節子は、皇位継承後に貞明皇后と呼ばれることになる。今上天皇の祖母である。
 明治天皇は息子の嫁を選ぶにあたって、「一に皇族、二に五摂家」と希望を述べたという。
 皇族とは言うまでもなく、天皇を先祖に持つ宮家を指す。明治天皇の意向を受ける形で、最初に皇太子妃に選ばれたのは伏見宮家の長女、禎子だった。伏見宮は北朝系の崇光天皇を祖先とする。禎子は家柄もさることながら、容姿が決め手となり、満場一致で皇太子妃に内定した。明治以降、皇后も人前に出るようになり、写真も撮られる。美貌禎子はその点でも申し分ないと見られたのだった。ところが内定後の健康診断で肺に疾患が見つかり、この婚約は取り消されてしまう。
 改めて皇太子妃を選び直すことになったが宮家には禎子のほかに適当な姫がおらず、格を落として五摂家から探すことになった。
 五摂家とは藤原家を祖先に持つ、公家の名門五家(近衛、九条、二条、一条、・・・