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連載

本に遇う 第231話

子どもは親を選べない
河谷 史夫

2019年3月号

 何ともやるせない。
 年明けに千葉県野田市で起きた十歳女児虐待事件である。両親から折檻されて死んだ子が、学校のアンケート用紙に書きつけた「先生、どうにかできませんか」という文字が目の中を回る。
 去年もあった。東京都目黒区で虐待を受けた女児が、あたら五歳の命を落とした。鉛筆で「もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」と綴っていたノートが残っていた。
「心愛」と「結愛」と、名前に「愛」という字をもらった娘たちであった。必死の願いを誰にも受け止めてもらえなかった。永遠の沈黙後、学校や教育委員会や文部科学省や児童相談所や警察や政治家が責任の押し付け合いをしている。何もかも後の祭りだ。
 心愛さんはこう書いていた。
「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きているときにけられたりたたかれたりされています。先生、どうにかできませんか」
 結愛ちゃんはこう書いていた。
「もうパパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんからきょうよりもっともっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして・・・