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政治

《罪深きはこの官僚》安井正也(原子力規制庁長官)

福島の反省なき「原発推進のプロ」

2019年3月号

 未曽有の被害をもたらした東京電力福島第一原発事故の反省から生まれたはずの規制官庁のトップは、いつまでこの男なのか。原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁長官の安井正也氏は、経済産業省で原子力政策を長年担当してきたプロ中のプロ。追放されたはずの「原子力ムラ」の中心人物だ。原子力推進の専門家としての多大な実績に加えて、総理秘書官の今井尚哉氏とは経産省の同期で、官邸とのパイプ役もこなす。規制と推進を峻別するために発足した規制庁のトップとして、これほどふさわしくない人物もほかにいないが、事故から九年を迎える今も、交代の話は聞こえてこない。
 規制庁の長官は初代が警察庁出身の池田克彦氏、二代目は環境省出身の清水康弘氏と、経産省や文科省などの推進官庁出身者は排除されてきた。安井氏自身も当初は固辞していた、強引に口説き落としたのが当時の田中俊一規制委員長その人だった。「原発を利用するための規制」という田中路線を継承するには政治的な圧力をかわしながら官邸と歩調を合わせる絶妙なバランス感覚が必要だ。「現委員長の更田豊志氏だけでは力不足とみた田中氏は、安井氏を必死で説得した」(規制庁幹部)・・・