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連載

Book Reviewing Globe 418

データ独占企業を制御する方法

2019年3月号

 AIとビッグデータによって労働も雇用も車も教育もキャリア形成も何から何まで変わる。そして個人、企業、政府の意思決定のあり方も、情報とデータの制約が克服されるにつれ、変わってくる。
 すでにアップル、グーグル、フェイスブック、アマゾンのような企業は、スケール効果とネットワーク効果を最大限発揮し、独占利潤を手にしている。しかも、彼らは顧客(個人と企業)のデータをビッグデータ化することで、そこからフィードバック効果を引き出している。グーグルのスペル自動点検は、利用者が使えば使うほど、その能力は高まる。IBMのAI「ワトソン」の皮膚がん発見サービスは、顧客の提供する皮膚がんデータを見れば見るほど精度が磨かれる。スケール効果がコストを下げ、ネットワーク効果が利用サービスを拡大させ、フィードバック効果が製品の質を向上させる。
 そうした“効果”は独占をもたらす。それを是とする考え方もある。シリコン・バレーの教祖の一人であるピーター・シールは「もし、永続的な価値をつくり上げ、それをつかみたいのなら、独占を構築することだ」とご託宣を述べる。著者たちはそれに・・・