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社会・文化

北海道「雪」に生きる動物たち

命を賭けた「越冬」に変化

2019年2月号

「雪は天からの手紙」と語ったのは雪氷学者の中谷宇吉郎だが、吹雪がやんだ後の雪面には、動物たちが描いた「生と死の絵本」が残されている。
 白く緩やかに広がる雪原に、細く長く続く一本道はキタキツネが獲物を求めて歩き始めた足跡だった。
 目的があるのだろうか。丘を登り、下り、斜面を横切って、吹きさらしの中を足跡を残してゆく。夏であればジャガイモの薄紫の花が咲き揺れ、緑濃いビートの葉が畝をつくる広大な畑。今は何も残らず、わずかな陰影を見せるだけの雪化粧に覆われている。
 小さなヤナギの木立があった。雪面に枯れた枝がくっきりとした影を落とす。足跡はそこに吸い込まれるように入り込み、ぐるりと一周しただけで、再び雪原に出て行った。
 一カ所だけ、キツネが木の根元に鼻先を突っ込んだような跡があったが、めぼしいものは見つけられなかったのだろう。
 地吹雪がおさまった平坦な場所で、いきなり足跡が乱れた。踏み跡が重なり、斜めに深く雪を掘り返した穴がある。激しく飛び散った雪のかけらが、キツネの必死さを物語る。
 白く乱れた雪片の中に、目も覚めるような・・・