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社会・文化

大嘗祭「前例踏襲」に嘆く皇室

「天皇の願い」を無視する安倍政権

2019年1月号

 二百二年ぶりに天皇が生前譲位する「皇室の年」を迎えた。が、めでたかるべき時に皇族の憂いは晴れない。それどころか代替わりを前に悩みは深まるばかりだ。思い煩いの根は、政治との間合いの定まらなさにある。
 昨秋、秋篠宮は五十三歳となる誕生日(十一月三十日)に当たって記者会見し、今年即位する新天皇が一代に一度限り行う重要な皇室行事「大嘗祭」について「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか。憲法との関係はどうなのか。私は内廷会計で行うべきだと思っています」と述べた。
 さらに「そのことは宮内庁長官などにはかなり私も言ってるんです。ただ、話を聞く耳を持たなかった。非常に残念なことだったと思っています」と続けた。
 異例の発言である。問題は三点。政教分離の観点から大嘗祭への国費支出は妥当か。「天皇は国政に関する権能を有しない」憲法四条の規定に照らして秋篠宮発言は容認されるか。記者会見という公式の場で宮内庁長官に苦言を呈するのはふさわしい振る舞いか。
 秋篠宮は会見で話す内容をあらかじめ天皇・皇后両陛下に伝えてある。三十年前、平成を迎えた時も同じ意見を・・・