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中東は「大混乱前夜」の様相

諸悪の根源は「サウジ皇太子」

2018年12月号特別リポート

 中東には二〇一一年にいわゆる「アラブの春」と称される嵐が吹きまくった。次には一四年の石油価格の大暴落だ。
 いま第三の地響きが進行している。サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールで殺害された事件は、リヤド王室最大の実力者で事実上の王位継承者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の地位を揺るがせている。中東でサウジに対抗して覇を争うトルコは、事件の情報を内外のメディアにリークするなどの操作でサウジの混乱を策してきた。
 サウジとトルコの目標は、皇太子の座を徹底的に守ろうとするサウジ側と、打倒もしくはサウジの威信失墜を目論むトルコとの間で真っ向から対立し、国際的に凄まじい情報戦が展開されている。皇太子には敵が多い。すでに宮中内の不穏な動きを予想する向きもあるが、サウジの打撃は覆いようもなく露わになっている。シリアやイエメンへの介入を試みた皇太子の責任も当然問われよう。

米・サウジ関係を毀損した影響

 サウジにとって事件がどれほど重要だったかは、発生後一カ月半の長時間・・・