本に遇う 第228話
西郷隆盛の不思議さ
河谷 史夫
2018年12月号
NHK大河ドラマの『西郷どん』に魅了されてファンになった、という投書が新聞に出ていた。六十八歳の主婦で、「気は優しくて力持ち。ぜいたくを好まず、実直な性格。皆から信頼され、統率力がある」と、ベタ惚れである。
この六月に出た原田伊織著『虚像の西郷隆盛』には、その本性は「軍」好きの冷徹な策謀家、度量偏狭で人の好き嫌いが激しいとあった。見方もそれぞれである。
大河の主人公として西郷隆盛は二番煎じだ。今回は林真理子原作というが読んでない。一九九〇年の初回の原作は司馬遼太郎の『翔ぶが如く』で、これは読んだ。
文庫本で十冊に及ぶ『翔ぶが如く』を書き上げた司馬が「ついに西郷という男は分からなかった」とどこかで述べていたが、出典を探せないでいる。「書いてみて、はじめて何を書きたかったのかが知れる」と言う作家もいたから、西郷は畢竟不可解ということに司馬は行き着いたのかも知れない。
何しろ、革命を主導して成功し、新政権の「首班」となりながら、一転反乱軍の首謀者に祭り上げられて死んだ男である。勝海舟によれば、西郷に会った坂本龍馬が「西郷という奴はわからぬ奴だ・・・
この六月に出た原田伊織著『虚像の西郷隆盛』には、その本性は「軍」好きの冷徹な策謀家、度量偏狭で人の好き嫌いが激しいとあった。見方もそれぞれである。
大河の主人公として西郷隆盛は二番煎じだ。今回は林真理子原作というが読んでない。一九九〇年の初回の原作は司馬遼太郎の『翔ぶが如く』で、これは読んだ。
文庫本で十冊に及ぶ『翔ぶが如く』を書き上げた司馬が「ついに西郷という男は分からなかった」とどこかで述べていたが、出典を探せないでいる。「書いてみて、はじめて何を書きたかったのかが知れる」と言う作家もいたから、西郷は畢竟不可解ということに司馬は行き着いたのかも知れない。
何しろ、革命を主導して成功し、新政権の「首班」となりながら、一転反乱軍の首謀者に祭り上げられて死んだ男である。勝海舟によれば、西郷に会った坂本龍馬が「西郷という奴はわからぬ奴だ・・・