社告 中原伸之氏との係争で弊社「勝訴」
2018年11月号公開
去る9月12日、『選択』2016年9月号の記事「出光『泥仕合』は社会の大迷惑」の一部記述をめぐり、東亜燃料工業(後の東燃ゼネラル石油、現JXTGホールディングス)元社長の中原伸之氏が弊社・選択出版に対し、名誉毀損を訴えていた裁判の控訴審判決があり、東京高等裁判所(川神裕裁判長)は「本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却する」との判断を下しました。
これに先立つ3月19日の東京地方裁判所(水野有子裁判長)の原判決でも「棄却」の判断が下されており、一審・二審とも本誌記事の正当性が全面的に認められました。その後、中原氏(代理人は「のぞみ総合法律事務所」所属の矢田次男弁護士、吉野弦太弁護士、鳥居江美弁護士)は上告を見送り、弊社の勝訴が確定しましたので、読者の皆様に裁判の顛末をご報告いたします。
本件記事は、昭和シェル石油との合併をめぐって出光興産の創業家と経営陣が対立した“お家騒動”について報じたものです。対立は16年6月の出光の株主総会で表面化し、創業家当主の出光昭介氏は昭シェル株を0.1%購入、その後も買い増しして出光と昭シェルの合併を阻止する意向を示しました。
石油業界では当時、創業家は合併阻止を打ち出したものの、巨額の昭シェル株の買い増し資金をどう調達するのかに関心が集まっていました。そうした中、創業家に融資元を斡旋し得る人物として取り沙汰されていたのが、昭介氏とつながりがあり、また日本銀行政策委員会審議委員などを務めて金融界に人脈がある中原氏です。奇しくも当時、出光と昭シェルのほか、東燃ゼネラル石油とJXホールディングスの合併交渉も進められていましたが、こうした経済産業省の主導による石油元売りの再編に強く反対していたのも、かつて東燃ゼネの前身の社長の地位にあった中原氏でした。
とりわけ経産省は、12年ごろに東燃ゼネで再編賛成派と反対派の内紛が起きた際、それに巻き込まれた同省有力幹部が一時左遷されたことから、反対派の背後に中原氏の存在があるとみて、中原氏を警戒していたのです。以上の経緯を、事実に即して報じたのが本件記事です。
ところが、中原氏は本件記事中の以下2点の記述を指摘し、名誉毀損を訴えました。
①「中原は三年前、経産省に融和的な東燃ゼネ社長、武藤潤の失脚を狙ったスキャンダルに関与したほどだ」
②「そのトバッチリを受け、経産省の事務次官候補である当時の資源・燃料部長は一時左遷を余儀なくされた。以来、経産省は中原を“例の老人”と警戒してきた」
中原氏の主張はつまり、2点の記述は自らを「スキャンダルに関与した陰湿、姑息な人物であり、経済産業省内では『例の老人』などと揶揄され、警戒されるほど疎まれる人物であるとの印象を与える」とし、自らの社会的評価を毀損させたというものです。これに対して裁判所は、「あくまで本件記事の主題は出光と昭シェルとの合併における出光創業家の内紛を取り上げたものであり、原告は紹介にとどまっており、スキャンダルや対立、原告の関与について評価した部分は存在しない」との判断を下しました。東京地裁と東京高裁は共に、中原氏の主張を認めず、5500万円の金員の支払いや謝罪広告掲載などの原告の請求は「いずれも理由がない」として全て退ける判決を下しました。
本件記事の主題は、あくまで出光の“お家騒動”の行方であり、中原氏に関する記述は傍流ストーリーに過ぎません。そのわずかな記述に対して、5500万円もの超高額な賠償金を求め、なおかつ謝罪広告まで要求してきたことは異様と言ってよいでしょう。
こうした中原氏の請求が全て棄却される判決が下されたことにより、民主主義社会の基盤である言論の自由、報道の自由が損なわれずに済んだことは、読者と共に喜ぶべきことであると考え、ここにご報告申し上げるしだいでございます。
これに先立つ3月19日の東京地方裁判所(水野有子裁判長)の原判決でも「棄却」の判断が下されており、一審・二審とも本誌記事の正当性が全面的に認められました。その後、中原氏(代理人は「のぞみ総合法律事務所」所属の矢田次男弁護士、吉野弦太弁護士、鳥居江美弁護士)は上告を見送り、弊社の勝訴が確定しましたので、読者の皆様に裁判の顛末をご報告いたします。
本件記事は、昭和シェル石油との合併をめぐって出光興産の創業家と経営陣が対立した“お家騒動”について報じたものです。対立は16年6月の出光の株主総会で表面化し、創業家当主の出光昭介氏は昭シェル株を0.1%購入、その後も買い増しして出光と昭シェルの合併を阻止する意向を示しました。
石油業界では当時、創業家は合併阻止を打ち出したものの、巨額の昭シェル株の買い増し資金をどう調達するのかに関心が集まっていました。そうした中、創業家に融資元を斡旋し得る人物として取り沙汰されていたのが、昭介氏とつながりがあり、また日本銀行政策委員会審議委員などを務めて金融界に人脈がある中原氏です。奇しくも当時、出光と昭シェルのほか、東燃ゼネラル石油とJXホールディングスの合併交渉も進められていましたが、こうした経済産業省の主導による石油元売りの再編に強く反対していたのも、かつて東燃ゼネの前身の社長の地位にあった中原氏でした。
とりわけ経産省は、12年ごろに東燃ゼネで再編賛成派と反対派の内紛が起きた際、それに巻き込まれた同省有力幹部が一時左遷されたことから、反対派の背後に中原氏の存在があるとみて、中原氏を警戒していたのです。以上の経緯を、事実に即して報じたのが本件記事です。
ところが、中原氏は本件記事中の以下2点の記述を指摘し、名誉毀損を訴えました。
①「中原は三年前、経産省に融和的な東燃ゼネ社長、武藤潤の失脚を狙ったスキャンダルに関与したほどだ」
②「そのトバッチリを受け、経産省の事務次官候補である当時の資源・燃料部長は一時左遷を余儀なくされた。以来、経産省は中原を“例の老人”と警戒してきた」
中原氏の主張はつまり、2点の記述は自らを「スキャンダルに関与した陰湿、姑息な人物であり、経済産業省内では『例の老人』などと揶揄され、警戒されるほど疎まれる人物であるとの印象を与える」とし、自らの社会的評価を毀損させたというものです。これに対して裁判所は、「あくまで本件記事の主題は出光と昭シェルとの合併における出光創業家の内紛を取り上げたものであり、原告は紹介にとどまっており、スキャンダルや対立、原告の関与について評価した部分は存在しない」との判断を下しました。東京地裁と東京高裁は共に、中原氏の主張を認めず、5500万円の金員の支払いや謝罪広告掲載などの原告の請求は「いずれも理由がない」として全て退ける判決を下しました。
本件記事の主題は、あくまで出光の“お家騒動”の行方であり、中原氏に関する記述は傍流ストーリーに過ぎません。そのわずかな記述に対して、5500万円もの超高額な賠償金を求め、なおかつ謝罪広告まで要求してきたことは異様と言ってよいでしょう。
こうした中原氏の請求が全て棄却される判決が下されたことにより、民主主義社会の基盤である言論の自由、報道の自由が損なわれずに済んだことは、読者と共に喜ぶべきことであると考え、ここにご報告申し上げるしだいでございます。
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