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「AI脅威論」人間は自信を持て

西垣 通 (情報学者)

2018年11月号

 ―人工知能(AI)が人間を追い越す「シンギュラリティ(技術的特異点)」が話題になっています。「二〇四五年頃に到達する」という学者もいます。
 西垣 それは間違いだと思う。シンギュラリティ論には、「生物と機械の本質的差は何か」という視点が欠けている。生物とは、自分で自分を作っていく自律的な存在だが、一方AIは、基本的には全部人間によって作られる他律的な存在だ。
「AIがAIを作る時代が来る」というが、プログラムを作るプログラムも昔からある、他律的存在にすぎない。状況によって対応を変える「適応型AI」は可能だが、AIが、真に自律型になることなどありえない。

 ―「ディープ・ラーニング」が、囲碁や将棋で人間を負かしています。
 西垣 状態数が有限のゲームでは、AIは強い。計算を多層で行うので「ディープ(深層)」と呼ばれるが、人間が「深く考える」のとは意味が全く違う。
 人間と機械の決定的な違いは、共感能力にある。
 好例はサービス業だ。店員は客の仕草、・・・