三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

ノーベル賞の「カラクリ」

受賞の鍵は「欧米学術誌」対策

2018年11月号


 本庶佑・京都大学特別教授のノーベル生理学・医学賞受賞決定に日本中が沸き立つその陰で「ノーベル財団が製薬マネーに負けた。ノーベル財団は苦渋の決断だったろう」(国立大学医学部教授)と冷たい視線を送る専門家は少なくない。ノーベル財団の受賞者選考基準は「人類のために最大たる貢献をした人」。ところが、その至高の選抜とは裏腹に、本庶氏の研究成果を基に開発されたがん免疫療法治療薬オプジーボそのものは、まだ人類に貢献しているとは言い難い。年間一千万円を超える薬代がネックとなって、恩恵を被るのは先進国の、それも一部の人々に限られるからだ。
 意外かもしれないが、創薬関係者がノーベル賞を受賞した例は少ない。過去百九回の生理学・医学賞で、創薬関係者が受賞したのは、今回を含め四回にとどまる。高脂血症治療薬を開発し、毎年のように候補に上がる遠藤章氏もいまだ受賞していない。
 薬の開発が人類の健康に貢献するのは論をまたないが、ノーベル賞を受賞しにくいのは、臨床試験の段階で巨額の資金が必要となり、グローバル製薬企業が主導しているためだ。その一方で、有力な科学メディアによる国際世論の・・・