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米国で「働かない現役世代」が膨張

繁栄に潜む「病める社会」の謎

2018年11月号

「現在の景気サイクルがかなりの期間、効果的に無期限に続くのは不可能と考える理由はない」
 ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は十月初め、イベントの中で驚くほど強気の景気見通し発言を連発した。「労働市場が過熱したり、価格圧力が上昇するリスクがあるという根拠は見られない」などと述べ、市場コンセンサスよりタカ派的姿勢をみせた。
 強気になるのも無理はない。九月の失業率は前月の三・九%からさらに下がり、ITバブル期の二〇〇〇年四月を下回る三・七%と、実に四十九年ぶりの低水準を記録した。ちなみに、この四十九年前の低失業率は、ベトナム戦争に多くの若者が駆り出されたため、極端に労働市場が引き締まったことによる。
 そんな異常ともいうべき今の雇用統計の前提となる部分に、解明できていない謎がある。それは「なぜ労働参加率が低いのか。なぜ低下が続いているのか」である。
「労働参加率などの指標をみると、大きなスラック(活用されていない労働力)が存在することを示している」
 数年前に当時FRB議長だったジャネット・イエレン氏は度々、こうしたこと・・・