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経済

《地方金融の研究》埼玉縣信用金庫

海外不正送金「十八億円」の大罪

2018年10月号

 埼玉県のほぼ中央に位置する比企郡ときがわ町。そこに本社を置く自動車輸出入会社の社長を名乗る男が、最初にその信用金庫の窓口に姿を現したのは約二年半前。二〇一六年五月のことだった。
 来店の目的は海外送金。仲介貿易で輸入した中古船舶や砂糖、コメといった商品の代金を相手先の銀行口座に振り込みたいという依頼だった。その銀行と取引がなかった信金ではさっそくコルレス契約のある某メガバンクに送金の実務を委託。すべての手続きはマニュアルに沿って流れ作業的に行われ、送金処理は滞りなく完了した。だが……。
 県北・熊谷市を本拠とする埼玉縣信用金庫、通称「さいしん」が今、マネーロンダリング(資金洗浄)騒ぎに揺れている。発覚したのは今年二月の内部監査。男が送金を依頼した資金の出所がはっきりしないうえ、受取先の法人の実態も不明といった処理例が相次いで見つかったのだ。
 さいしんでは泡を食って金融庁に報告。同庁が確認したところ、送金先の国や取扱商品が異なるのに同じ金額が同時に振り込まれているなど多数の不審点が浮かび上がってきたという。さらに確認作業を進め・・・