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連載

Book Reviewing Globe 413

戦争の手段としての「貿易」

2018年10月号

 世界のポピュリスト政治家の教祖的存在であるスティーブ・バノンが、トランプ米大統領の不興を買ってホワイトハウスを去るに当たって述べた言葉が、いまの時代を象徴している。
「米国は中国との経済戦争の只中にある」
 貿易は、どの国にとってもいまや中心的な戦略課題である。
 しかも、大国が外交戦略を追求する際、貿易と安全保障をからめるリンケージが常態化しつつある。
 トランプは、中国との貿易ディールを、北朝鮮の核問題とあからさまにリンクさせている。
 トランプ・ツイート:「これまでの米国の指導者は、毎年何千億ドルもの黒字を中国に稼がせてきた。それなのに中国は北朝鮮のことで何にもしない。おしゃべりだけ。こんなことをいつまでも続けさせはしない。中国は簡単に問題を解決できる」 
 テリーザ・メイ英首相は、欧州理事会議長に宛てた手紙の中で、英国のEU離脱(Brexit)のディールは、英国の欧州安全保障ディールと連関しうることを示唆した。欧州は英国の軍事力とインテリジェンス力なしには安全保障が覚束ない。メイは、離脱する英国を制裁するよ・・・