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政治

安倍「官邸官僚」の 自壊始まる

「内輪もめ」で揺らぐ政権の屋台骨

2018年10月号

 総理大臣官邸であらゆる政策を仕切ってきた「官邸官僚」の仕事が、迷走を始めている。ボスである総理大臣の安倍晋三が自民党総裁選で連続三選を果たし、官邸官僚の力が増幅されることへの警戒感が広がるのとは裏腹に、急速に自壊が進んでいるのだ。
 象徴的なのは安倍のスピーチだ。アベノミクス、地方創生、一億総活躍……キャッチーなコピーで内閣支持率を下支えしてきたスピーチのたたき台は、官邸官僚が作ってきた。ところが九月の総裁選では、安倍陣営側から記憶に残るフレーズが一切、出てこなかった。「昨年の総選挙で公約を掲げ、支持を得たばかりだ」として、新規の政策も示さず、五年八カ月の政権の成果として都合の良い数字を羅列するばかりだった。
 安倍の政策スピーチは、歴代政権同様、経済産業省出身の総理大臣秘書官、佐伯耕三が書く。とりたててスピーチ・ライターとしての能力を買われたわけではなく、いわば「当て職」だ。問題は、新たに政策テーマを打ち出そうにも、各省庁から斬新なアイデアが集まらなくなったことにある。無理もない。内閣人事局を通じて中央省庁の人事を掌握した内閣官房長官・・・