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中国経済は「失われた二十年」へ

「バブルと崩壊」日本の二の舞いに

2018年10月号

 中国にとってトランプ米大統領に仕掛けられた貿易戦争はどんな意味を持つのか。歴史的にみれば、日本が一九八五年に経験した「プラザ合意」とその後の急激な円高が最もよく似た経済事象になるだろう。プラザ合意によって円は二年間で約二倍に上昇、製造業のアジアへの工場大移転が起きた。同様に今、中国に拠点を持つ外資や中国製造業も生産拠点脱出に動き始めている。これから中国は日本がかつてたどったように「超金融緩和」政策に向かうしかなく、それは中国バブルをさらに悪化させる。中国人民銀行は日本銀行の失敗を避けることができるのか?
 今、中国経済ではっきりしているのは、株式は「売り」、不動産は「買い」ということだけだ。中国を代表する株価指数、上海総合指数は三月に米中貿易紛争が勃発して以来、一本調子で下げ続け二千七百を割り込んでいる。直近の高値である二〇一五年春に比べ四〇%以上もの下落だ。
 一方、国家統計局が公表する「主要七十都市の不動産価格指数」は四月には前年同月比四・七%増だったが、七月には五・八%増まで上昇幅が拡大した。投資家は米中貿易戦争による企業収益の悪化と世界経済への打撃を織り込・・・