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バチカン「法王降ろし」の泥仕合

醜聞の背後で蠢く「トランプ政権」

2018年10月号

「これはクーデターの企てだ」
「今や内戦状態に陥った」
 物騒な言葉で表現されるのは、今年十二月で八十二歳になるローマ法王フランシスコと、同様に高齢の、カトリック教会の高位聖職者たちの抗争だ。法王庁(バチカン)の薄暗い回廊と世界中の教会の最奥部で、「強欲坊主」たちが信者そっちのけの権力闘争を始めた。背後には、何にでも首を突っ込む、あの人物の影がある。

保守派の陰謀グループの存在

 二〇一三年に誕生して以来、南米アルゼンチン出身のフランシスコ法王は、飾らない人柄と笑顔、旧態依然のカトリック教会を近代化しようとする試みで、世界中の平信徒の敬愛を勝ち得てきた。
 ところがここ数年、教会の宿痾であった、聖職者による児童の性的虐待事件が米国、カナダ、西欧各国で爆発的に表面化し、フランシスコ人気に陰りが出てきた。
 衝撃的だったのは今年八月下旬のアイルランド訪問。
 首都ダブリンのフェニックス公園を会場にした野外ミサは、主催者側が予想した「五十万人」を大幅に下回る十三万人・・・