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連載

をんな千一夜 第18話

「女道楽」勝海舟の正妻
石井 妙子

2018年9月号

《勝 民子》

 今から六年ほど前、私は『文藝春秋』で「現代の家系」という隔月の連載を担当していた。話題の人物を先祖に遡って家系図とともに紹介するという主旨の企画で、誰を取り上げるかは毎回、編集部との話し合いで決めていた。そんな中で、ある時、「次回は是非、財務省の勝栄二郎事務次官を」と編集部に言われた。曰く、「勝さんは大物の事務次官で、しかも勝海舟のご子孫だとか。幕末の混乱期を支えた勝海舟の玄孫が今の民主党政権を支えている、面白い話じゃありませんか」。
 勝海舟はもとより、勝次官に関する知識も薄かった私は言われるがままに引き受けたものの、系図を調べ始めてから間もなく「勝次官は本当に勝海舟と血縁関係にあるのだろうか」と疑問に思った。
 とはいえ当時の政治ジャーナリズムは、「勝事務次官は勝海舟の玄孫」「子孫」というのが定説で、大手新聞も活字にしていたし、テレビでも政治評論家が堂々と述べていたので自信が持てなかった。恐る恐る「どうも子孫とは思えませんが」と編集部に連絡を入れたものの、宴席で勝次官と一緒になったこともある・・・