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社会・文化

オランダが挑戦する「海上牧場」

港湾都市の壮大な「生き残り戦略」

2018年9月号

 ライン川の河口にあるロッテルダム港(ユーロポート)は欧州最大の港だ。川の両岸約三十キロにわたって整備された港湾は、単なる荷揚げ施設ではなく石油コンビナートなどを備えた複合産業集積地域だ。その中央の一角に、実物大の牛の模型二頭が乗った正方形の浮体構造物が係留されている。現代アートのようにもみえるが、これぞ年内にも完成する世界初の海上牧場だ。
 三人の起業家が企画した「フローティング・ファーム」は、一辺が三十メートル、三階建てで、十一月の完成を目指して建造が進んでいる。四十頭の牛を飼育、日量八百リットルを搾乳し、現場や市内で販売する計画だ。「ハイテク・ラボ」としての実験農場だが、高級ヨーグルトに加工して普及品より一〇~一五%高い値段で売れれば黒字化できるという。建造費は二百五十万ユーロ(約三億二千万円)。八〇%は民間のベンチャー資金、二〇%は銀行の融資だ。海上牧場に続いて、同様の海上浮体構造物を二基つくり、それぞれ養鶏、野菜栽培に使う計画もある。
 水上で農業を営むフローティング・ファームという概念自体は、必ずしも新しくない。バングラデシュのデルタ地域などでは、筏の上・・・