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経済

三菱重工業「トルコ原発」の煩悶

名門を「東芝化」させる底なし沼

2018年9月号


 災い転じて福となす―、そんな芸当が三菱重工業にできるだろうか。
「これで、国策の“くびき”から解放されるかもしれない」
 同社関係者が語る“国策”とは、言うまでもない、トルコへの原発輸出である。二〇一三年五月、安倍晋三首相のトップセールスにより、三菱重工は黒海南岸のシノップに建設する出力百十万キロワット級の加圧水型軽水炉(PWR)四基を受注し、事業化調査を進めてきた。しかし、今年八月に入って通貨リラの急落によるトルコショックが勃発、今やプロジェクトの継続は極めて困難だ。
 いや、すでに三月の時点で総事業費は当初計画(二・一兆円)の二倍超の四~五兆円へ膨らむことが判明し、先行きを危ぶまれていた。建設主体の共同出資者だった伊藤忠商事が離脱、それでも進めた事業化調査は前提が変わってしまい、白紙に戻ることになる。同じ国策の国産旅客機「MRJ」の開発負担に苦しむ三菱重工にとって、シノップ原発を手仕舞いできれば、トルコショックはむしろ僥倖だろう。しかし……。
「すでにM・・・