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ドイツとロシアの近づく「和解」

トランプ孤立主義が生む「副産物」

2018年9月号

 近年対立が続いたロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が急接近している。
 二人が和解に向かうのは、ドナルド・トランプ米大統領の破天荒外交のおかげだ。通商と安全保障で、サンドバッグのように叩かれるメルケル首相と、米露首脳会談を経ても対露経済制裁を緩めてもらえないプーチン大統領が、「それならば」と両国の利害すり合わせに動いたのだ。

「ロシア抜きに欧州安保は無理」

 八月の会談の舞台になったのは、首都ベルリン郊外のメーゼベルク城。二〇〇七年から、独政府の公式の別邸として使われ、同盟国や友好国の賓客をもてなす場になった。ニコラ・サルコジ仏大統領、ジョージ・ブッシュ米大統領、安倍晋三首相らが過去のゲストに名を連ねる。
 ロシアでは一〇年のドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)が最後。プーチン大統領の初登場は、過去数年、独露関係がいかに冷え切っていたかを示した。
 ドイツ報道陣が驚いたことに、密室での会談は三時間も続いた。旧東独育ちのメルケル首相はロシア・・・