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WORLD

米国は誰の同盟国なのか

欧州よりロシアを選ぶトランプ

2018年8月号

 トランプ米大統領が世界注視の中で描いてみせたブリュッセル、ロンドン、ヘルシンキ訪問の軌道にはどのような意味があったのだろうか。クリミア半島を強奪し、バルト三国やウクライナ東部など国境を接する諸国への軍事的脅威を隠そうともしないロシアに断固たる措置を取るためだったのかもしれないが、NATO(北大西洋条約機構)、とりわけドイツを槍玉に挙げて防衛費の負担増を迫った。ピントが外れていないだろうか。ロシアによる米大統領選介入疑惑の中で、米ロ首脳はどうしてこの時点で会わなければならなかったのか。トランプ大統領がヘルシンキから帰国したあとにホワイトハウスは、プーチン大統領を今秋ワシントンに招くとの発表を取り消した。
 目的と手段が明白でないトランプ外交の中ではっきりしたのは、NATOそのものが、発表された共同宣言とは裏腹に大きな曲がり目にさしかかったという事実であろう。ロシアの脅威のほかにテロ、移民、難民などNATO創設時に考えも及ばなかった守備範囲が拡大する一方で、ポーランド、ハンガリー、トルコなど内部に権威主義的政権が相次いで誕生し、意思の統一が図りにくくなってきた。NATO発足に一・・・