三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

《クローズ・アップ》山内雅喜(ヤマトHD社長)

過大請求で露呈した「嘘つき体質」

2018年8月号

 ドライバーなどへの残業代未払い、受託契約をめぐるアマゾンとの対立、宅配便料金の値上げなど、昨年の年初からヤマトホールディングス(HD)は深刻な問題が連続的に表面化している。その延長線上にあるのが、七月二十四日に公表した法人向け引っ越しの料金過大請求である。矢面に立つヤマトHDの山内雅喜社長(五十七歳)の顔には苦渋の色が刻まれている。
 今回、新たな問題となった法人向け引っ越し業務は、言うまでもなくヤマト運輸の本業ではない。製造業、小売業向けの貨物運送を祖業とするヤマト運輸は一九七六年に当時の社長の小倉昌男氏の発案で個人の小口荷物の配送という新たな業務を業界の先陣を切って開始、運送業に宅配便という分野を創造した。
 モノの輸送を伴うといっても引っ越しはヤマトのコア事業にはなり得ない。現実にヤマトのなかでみれば法人向け引っ越しは数%にも満たないマイナーなビジネス分野である。にもかかわらず、ヤマトが新たな分野として積極的に取り組んだのは、宅配便の収益低下という現実があるからだ。
 宅配便は佐川急便、日本郵便はじめ大小様々な事業者の参入で乱戦とはいえ、需要全体は・・・