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連載

本に遇う 第224話

いっさい夢にござ候
河谷 史夫

2018年8月号

 笑うに笑えぬ漫画のごとき安倍政権である。西日本豪雨とオウムの死刑囚七人の処刑が重なったとき、首相ら自民党議員ざっと五十人が居酒屋ごっこをしていたそうだ。執行命令に署名した法相も写真に納まっていて、「よく笑顔で写れるものだ。どういう神経か」との投書が新聞にあった。
 弛緩した内閣とはいえ、脆弱な国土が「何十年に一度の豪雨」に襲われ、何万という避難者が出ている最中、防衛相も入って「ああ、こりゃ、こりゃ」とは恐れ入る。為政者としての責任感が感じられない。総辞職ものだろう。
 当事者意識というものがない。質問されてもまともな答弁をしない。国会質疑でも記者会見でも質問の趣旨に関係のないことをべらべらと喋り、時間切れで退席というのが安倍の常套だ。自分が当事者とはどだい思っていないのだ。
 財務省で組織ぐるみの公文書改竄を引き起こした森友問題で、「行政府の長としての責任」を感じるとは答えたが、「当事者としての責任」を問われて、「自分が改竄をしたわけでも、改竄を指示したわけでもない」と言い募った。部下がしたことは部下の責任で、「行政府の長」の知るところではないというわけ・・・