三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

総裁派閥「清和会」に人材なし

後継育成ができない安倍の限界

2018年8月号

「首相を辞めたら清和会(=自民党細田派)の会長として暫くは気楽に議員生活を楽しみたいよ」
 今から四年ほど前、安倍晋三は親しい民間人にこう漏らしたことがある。アベノミクスで株価は急騰。集団的自衛権の行使容認の閣議決定にもこぎ着けた頃だ。余力を残して首相を辞め、実質的には今も安倍派である清和政策研究会(清和会)に戻ってキングメーカー気分を楽しみたいという虫のいい願望が頭をよぎったのだ。
 ただ、キングメーカーとして「院政」を敷くといっても自らの派閥に総裁候補がいなければ、他派閥との駆け引きもままならない。そのため、安倍は自らの夢を稲田朋美に託した。女性の稲田であれば、男の嫉妬が渦巻く永田町で異例の抜擢をしても許されるとの計算もあった。わずか当選三回で閣僚に登用し、その後も異例の厚遇を続ける。だが、防衛相で致命的なキズを負って引責辞任。その後、親しい経済人から稲田を重用した理由を尋ねられた安倍は「私が首相退任後、派閥に戻っても、清和会に総裁候補が不在では迫力がないからね。稲田さんを初の女性宰相候補に育てられないかと考えたのだが……」と本音を漏・・・