三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

東京医科歯科大で進む「学長専横」

訴訟沙汰も起こる不穏な学内

2018年7月号

 多くの大学が集まる文教地区、東京・御茶ノ水―。JR駅の北側にあるのが東京医科歯科大学だ。東京大学医学部の陰に隠れがちだが、日本トップレベルの医学部と歯学部を持つ国立名門大学である。その大学で昨年来、ドタバタが続いている。現職の教授が、法人である大学と学長を民事訴訟で訴えるという事態が起きたのだ。
 同大学の「学長選考会議」のメンバーだった江石義信・前医学部長が自らの名誉回復のために賠償を求める民事訴訟を起こしたのは昨年十一月のことだった。裁判は半年以上が経過した現在も進行中だ。このトラブルのきっかけになったのは一昨年十二月に行われた学長選考だった。
 このとき、二選目を狙っていた吉澤靖之現学長に対して、学内の強い推薦を受けて対抗馬として立ったのが、当時の同大附属病院副院長で外科の筆頭教授だった河野辰幸氏だ。

「学内支持ゼロ」で学長当選

 現在、国立大学の学長選でかつてのような教員らによる大掛かりな投開票はない。文部科学省の大学改革の一環として、各大学が学長選考会議を設置し、質疑や議決を経・・・