三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

南北朝鮮「平和協定」の甘い罠

「米国なき半島」を狙う中国の策謀

2018年6月号特別リポート

 トランプ米大統領に「首脳会談の中止」という強烈なパンチをくらった北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、自らがいかに弱い立場にあるかを暴露してしまった。韓国の文在寅大統領に泣きついて、五月二十六日に会談し、朝鮮半島の「完全な非核化」をする意思があると伝え、「米国が体制の安全を保証してくれるか」との不安を漏らした。いったん消えたと思われた六月十二日のシンガポールにおける首脳会談が予定どおり開催される可能性は強まってきた。
 局面は大きく米国有利に傾いてはいるが、非核化は、完全かつ検証可能で、不可逆な解体(CVID)を主張する米側と、「段階的で同時並行」のやり取りを目論む北側との隔たりは大きいうえに、「平和協定」を突破口にして体制維持をはかろうとする金委員長の罠に米国は嵌まり込まないだろうか。
 トランプ米大統領は「あなた方の声明に表れた激しい怒りとあらわな敵意に鑑み、私は現時点ではこの長く計画してきた会談を実施するのには不適当だと感じる」と、予定されていた会談を中止すると通告した。が、「この最も重要な首脳会談について考え直すことがあったら、遠慮なく私に電話をするか手紙を書・・・