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経済

「伊藤家回帰」で迷走するセブン&アイ

「大政奉還」前倒し論が急浮上

2018年6月号

 表舞台に立つ機会が徐々に増えているものの、不安材料ばかりが目立つ―。セブン&アイ・ホールディングスの二〇一八年二月期決算の発表会見に登壇した、伊藤順朗常務に対する記者や業界人の偽らざる感想だ。四月五日の会見場にいた流通ジャーナリストが語る。
「質疑応答がたどたどしく、見ているこっちが不安になった」
 伊藤氏は昨年の決算会見にも出席したが、そのときは発表が終わるとそそくさと会場をあとにした。今年は会見後に囲み取材に応じるなど、場慣れした様子も見せている。セブン関係者の一人が語る。
「伊藤家からの大政奉還のプレッシャーは徐々に強まっている。しかしこのまま伊藤常務体制に移行すれば、先行きは極めて不透明だ」
 鈴木敏文前会長追い落としクーデターから二年。司令塔を失った巨大小売り企業が文字通り迷走を始めつつある。

順朗氏の手腕は未知数のまま

 今年三月、『遺す言葉』という一冊の本がセブングループの出版社から発売された。著者は伊藤雅俊氏。いわずとしれたイトーヨーカ堂の創業者。齢九・・・