三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

《企業研究》武田薬品工業

シャイアー買収は破滅への「大博打」

2018年5月号

 進むも地獄、退くも地獄―といったところか。
 数次にわたる買収価格の積み増しを強いられ、疲労困憊ともいえる苦闘の末にようやく“大魚”を仕留めつつある武田薬品工業。英ロンドン株式市場に上場(米NASDAQにも上場)するアイルランドの製薬大手で、希少疾病領域に強いシャイアーを総額約四百六十億ポンド、日本円にして約六・九七兆円(一ポンド百五十一・五一円換算、以下同)で買収することがほぼ固まった。五月八日(ロンドン時間)にも基本合意する見通しだ。国内企業のM&Aとしては二〇一六年のソフトバンクグループによる半導体設計大手、英アーム・ホールディングス買収時の約三・三兆円をはるかに上回る、史上最大規模となる。
 とはいえ時価総額で一兆円超もの開きがある相手を標的とした、いわば「小が大を呑む」買収劇。武田が払うであろう代償は「『凄まじい』の一語」(金融関係者)に尽きる。
 浮き彫りになるのはバランスシートに刻み込まれることになる「無残な爪痕」(同前)。すなわち膨大な借金の山と一発退場の危うささえ潜む巨額減損リスク、さらには圧し掛かる多額の配当負・・・