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WORLD

中東から「総撤収」する米国

無秩序拡大で日本への影響甚大に

2018年5月号

 米国のドナルド・トランプ大統領が、中東における米国のプレゼンスを急速に低めている。四月に行われた米英仏軍による、シリア軍事施設へのミサイル攻撃は、米国総撤収の過程でのほんの挿話(エピソード)に過ぎず、トランプ大統領は、現在シリアに展開中の米軍二千人を早期に引き揚げる意向だ。
 トランプ政権は「イラン核合意」の破棄を目指すものの、その後の計画をほとんど示していない。以前は核合意に反対した同盟国、サウジアラビアとイスラエルにさえ、不安が広がっている。米政府は同盟国の懸念を脇に置いて、十一月の中間選挙と、さらに二〇二〇年の大統領選を見越して国内世論優先にまい進している。

シリア撤退に固執するトランプ

 今年三月二十九日。米英仏の対シリア攻撃に先立つ約二週間前のことだ。
 シリア北部に展開する米英軍の車両が、道路脇に仕掛けられた爆弾により爆破され、米軍と英軍の兵士計二人が死亡した。シリアの米軍にとって二人目、英軍にとってはシリアにおける最初の犠牲者だった。
 事件はその後のシリアでの劇・・・