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経済

米国の「景気後退」はいつくるか

「まだ当分先」との見方が有力

2018年5月号

 イールドカーブ(利回り曲線)が危険水域に突入▽長短金利差が十年ぶりとなる危機前の水準まで縮小―といった見出しを、米金融メディアは連日のように並べている。米連邦準備制度理事会(FRB)は、二〇〇八年の金融危機後に非伝統的な大規模金融緩和を実施した後、一四年一月に量的緩和の縮小を開始して出口に向かい、一五年十二月には利上げに踏み切った。フェデラルファンド(FF)金利誘導目標は一・五~一・七五%にまで引き上げられ、年内にはさらに二回程度の利上げが予想されている。こうした中で短期金利がにわかに上昇し、債券市場を騒がせている。果たしてこれは、米国経済の凶兆なのだろうか。
 イールドカーブとは、国債の長期金利と短期金利の差をグラフ化して、その傾き具合を見るものである。この傾きが急になれば「スティープ化」、緩やかになれば「フラット化」と言う。大雑把にいえば、不況で金融緩和を行った景気サイクルの前半ではスティープ化が起こり、引き締めによってフラット化が進行し、やがて景気後退前の最終局面では逆転する。
 スプレッド(利回り格差)の比較には様々な組み合わせがあるが、二年債と十年債の差・・・