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汚職と陰謀渦巻くウクライナ

対露抵抗の英雄が「逮捕」の奇怪

2018年5月号

 紛争が続くウクライナで、「聖女ジャンヌ・ダルク」と崇められた元軍パイロット、ナディア・サフチェンコ議員が、政府転覆を企てたとして逮捕された。国民的英雄としてロシアの刑務所から帰国して二年足らず。突然の暗転には、ウクライナの宿痾が潜んでいる。
 ヤヌコビッチ政権を倒して以降、ウクライナ国民がこれほど驚いたことはなかった。サフチェンコ氏は二〇一四年六月、ウクライナ東部で「親露」の分離主義勢力に拘束されて以後、ロシアの裁判所で毅然とした態度を取り続け、法廷でウクライナ国家を歌い、裁判官や吏員に反抗的態度を重ね、国民を奮い立たせたヒロインだった。ポロシェンコ大統領は、ウラジーミル・プーチン露大統領との直接交渉で釈放を取り付け、一六年五月に帰国した時は国中がこれを祝った。
 国民の人気は絶大で、「次の大統領にふさわしいのは誰か」という世論調査では、ポロシェンコ氏ら現職政治家を抑えて、断トツの首位。収監中に、ユリア・ティモシェンコ元首相率いる政党「祖国」が候補者名簿のトップにすえ、不在のまま当選。帰国後は国会活動に入った。

国民的英雄にクーデター容疑・・・