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連載

日本の科学アラカルト92

人工知能を活用 最先端の「材料設計」

2018年4月号

 後世の人から見ると、二〇一七年は「人工知能(AI)元年」と評されるかもしれない。通常のニュース番組でAIが特集され、碁の世界チャンピオンがAIに敗北した。完全自動運転車の実用化のための実験も本格的に始まっている。もちろん、AIの用途はこれだけではなく、金融商品やマーケティングなど経済分野ではすでに人間の仕事を奪いつつある。あらゆる分野での活用が期待されているが、産業界から注目されているのが「材
料設計」だ。
 新しい素材を設計するためには、結晶構造の組み合わせを模索する必要がある。三次元で、複数の元素を組み合わせて作り上げる結晶パターンの数は無数にある。その都度作成して、物性を調べるのでは時間がいくらあっても足りない。そのため、これまでの経験や勘を元に「有効だろう」という元素と結晶構造を絞り込んだ上で、実際の作成や物性測定を行う。それでも、「あたり」と「はずれ」があり、根気の要る作業となる。
 将棋や碁のAIは、それこそ無数にある手の中から、最適、つまり勝利に近づけるものを選ぶことができる。これを「最適解」というが、膨大なデータとその処理を繰り返すことに・・・